恋とさくらんぼ
『ありがとうございます』

牧野からの返信はそれきりだ。

少し寂しい気持ちになりつつも、自分のスマホでもないのだし、このくらいの距離がちょうどいいのかもしれない。

そこではたと思い出した。

桃は“桜”として牧野と仲良くなったのだった。浮かれて忘れていた。

ずーん、と一人落ち込む。どうしたらいいのか。

なにが辛いって、結果的に牧野を騙すことになってしまったことだ……。

泣きそうになりながら起き上がる。髪を乾かすのである。今さらだが。

そのとき、ピロンとスマホが鳴った。
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