恋とさくらんぼ
桜は赤面した。

大急ぎでまた車窓に目をやる。

家、緑、ビル、車、色んなものが後ろに流れていく。

つまらない景色をひたすら見つめている桜に対して、宮沢は愉快そうに笑っていた。

「面白いなあ、やっぱり」

「意味がわかりませんから!」

「次会うときはスカートでよろしく」

「ばっ……、もう会わないでしょ!」

「どうかな。あ、次の駅で降りるから」

飄々とした態度がまったく癪に障る。

桜はなにかの意地のように、のどかな風景を眺め続けた。
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