恋とさくらんぼ
降りた駅からバスで十分、市営のスタジアムに辿り着いた。

ここで試合が行われているはずだ。

「しかし……人が多い」

ぼそりと桜は呟く。

席はほとんど埋まっていて、座れそうにもない。

宮沢を窺うと、気にしたふうもなく言葉を返した。

「いいじゃん、尾行したことがバレなさそうで」

「びこ……っ、そんなんじゃないでしょうが」

「変わらん変わらん」

「そもそも……!」

言い出したのは宮沢くんでしょ、と言いかけたのだが、ぽんっと頭の上に手を置かれ、桜は固まった。
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