恋とさくらんぼ
「わざわざ髪結って、帽子かぶって、変装したつもりなんだろ?」

「つもり……宮沢くん、言葉の端々が失礼なんだけども」

「上手くいってると思うよ。俺は一瞬見間違えたし。身内相手でも有効かは知らんが」

「そ……そっか」

小憎たらしい、と思っていたはずなのだが、急に褒められて桜はへどもどする。

そんな折、宮沢がひょいと帽子を取り上げた。

「……あ! なにするの、返して」

「もうちょっと」

「なにが!?」

「結ってる髪、ちゃんと見ときたいなって思って」

「な……なんで!」

反射的に自分の髪を手で覆うようにしてしまう。

宮沢はわずかに不満そうにして、帽子を持っていない手で桜の片手を掴んだ。

「ちょ……ちょ、ちょっ、見られるために結ったわけじゃない……!」

「いいじゃん減るもんじゃなし」

精神ポイントが減る。
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