恋とさくらんぼ
まじまじ見られると気恥ずかしい。

桜は頬に血が上るのを止められない。

宮沢は、自分の興味の対象に、執着し続けるようだ。高校でずっと質問し続けたように。

飽きた様子もなく、桜の髪を見ている。

「宮沢くんの興味って、なんか変……!」

「そりゃどうも」

桜は帽子を取り返そうと片腕を伸ばすが、宮沢も高く腕を上げるので、届かなくなる。

「……ま、まだ……!?」

抵抗することを諦めて、桜は眉を下げた。早く宮沢が満足しますように、と願い始める。

それからたっぷり数十秒、えも言われぬ羞恥心に悩まされた。

「……おーけー。返すわ、はい」

ようやく宮沢が帽子を頭に戻し、掴んでいた腕を離したので、桜は飛び退って距離を取る。
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