恋とさくらんぼ
「面白いな」

「なにが!」

「髪の構造」

「構造……」

そんなものに興味を示すとは意味がわからない。

「今度、俺の前で結ってみせてよ」

「やだよ絶対」

「なんで」

「なんででも」

きっちり帽子をかぶり直しながら、桜は宮沢を睨みつける。

多分まだ顔が赤いので、あまり迫力はないのに違いない。

宮沢は歯を見せて笑った。

「あと」

「あと?」

「髪上げるのいいな。あんた、うなじきれいだから」

「なっ……!」

ますます赤くなった桜を見て、堪えきれなくなったように宮沢が噴き出す。

からかわれた……!

恥ずかしさと腹立たしさで拳が震えたが、楽しそうに笑いこける宮沢に、本気で怒りをぶつけることができないのが、自分でも不思議だった。
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