恋とさくらんぼ
二人はスタジアムの屋根の下を並んで歩いている。

「なあ、関谷がどこらへんにいるとかわからねえの?」

「さすがにそんなのは……」

「双子の勘みたいなのとかさ」

「ないから」

「やるだけやってみてよ」

「当たんないよ」

「いいよ」

「…………」

なにを言っても無駄なようだ。

桜は諦めた。当たらなくてもいいなら、と適当に指をさす。

「なるほど。行ってみっか」

軽い足取りで人混みを縫っていく彼を、子どもを眺めるような心境で桜はついていく。
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