恋とさくらんぼ
「おい。危ないぜ」

「えっ?」

選手たちを見るのに集中していて、咄嗟にどういうことかわからなかった。

どん、と体の側面に衝撃があって、かくりと膝の力が抜ける。

次の瞬間、桜は宮沢の腕の中にいた。

「言わんこっちゃない」

「あ……ありがと」

色々動揺して、桜は頬を赤くする。

宮沢が桜の腕を掴み、立つのを補助した。

コンクリートの地面を踏みしめて、宮沢を見ると、ばっちり目が合った。

「え……な、なに」

「……いや?」

にやり、と彼は目を細める。

「顔、赤いぜ。大丈夫か?」

「……っ!?」

ばっ、と慌てて腕で顔を隠す。

宮沢は噴き出して、桜の左腕を取った。
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