恋とさくらんぼ
よくわからないが桃は住所を口にする。

宮沢はスマホのメモ機能を使って書き留めたらしい。

「よし、サンキュ」

もう用はないと言わんばかりに足早に去っていくのを、ぽかんとして見送った。

「……なんだったんだろ」

「さあ。あいつ、変なやつだよね」

さらっと言い切った友だちは、で、と桃に向き直った。

「双子なの? 教えてくれればよかったのに」

「や、特に言う機会もなくて」

「なに、誰が双子って?」

「桃が」

「なにそれ初耳ー! 双子って珍しーよね!?」

人は人を呼び、普段と同じ騒がしい朝になって、桃は色々を脇に追いやった。
< 87 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop