優しい彼と愛なき結婚
どれくらい経ったのだろう。
30分か、40分か。
それくらいして大悟さんが寝室に戻ってきた。
私に気を遣ってか、忍び足だ。
微動だにせず、身構える。
ゆっくりと布団の中に入ってきた大悟さんは携帯を操作しているのか、眩しい光が漏れた。
しかしそれもすぐに終わり再び暗闇に戻ると、私の髪が揺れた。
いや、大悟さんが私の髪に触れたのだ。
「おやすみ」
彼はそう呟いた。
本当に小さな声で。
よし。上手くいった。
そう身体の力が抜けた瞬間、
温もりに包まれた。
ーー驚き、反射的に目を開けた。
そして。
同じように目を見開く大悟さんと目が合った。
「……」
「……」
「…起こしちゃった?」
大悟さんは私の身体に右腕を乗せ、まるで抱きしめているかのような体勢のまま動かなかった。