優しい彼と愛なき結婚
私を試しているのだろうか。
一度は綾人さんに抱かれようとした私に対して、思うところがあるのだろうか。
「嫌です」
はっきりと口にした。
「…そうだな」
先程の言葉通りに彼の手は止まり、身体ごと私から離れた。
「大悟さん。どういうつもりですか?訳も分からず、抱かれるのは嫌です」
あのまま私が流されてしまっていたら、本当にするつもりだったのだろうか。彼の気持ちが見えず、焦る。
「優里を抱きたいと思った。それじゃぁ理由にならない?」
ストレートな言葉に、勇気が出た。
恥を忍んで聞いてしまおう。
先に仕掛けてきたのは大悟さんだ。
「ひとつになれたら私たちは、ホンモノの夫婦になれますか?」
思ったより小さな声で、弱々しい問いになってしまった。