優しい彼と愛なき結婚

私の答えを聞いて大悟さんは僅かに目を見開いた後、こぼれるような笑みを見せた。


「ふっ、おまえには敵わないよ。…腹減った」

「…ご飯ができてますから、顔洗ってきてくださいね」


大悟さんはよく笑う人だけれど、不意打ちの笑顔には心を鷲掴みにされる。この人をもっと笑わせたい、笑って欲しい。そんな欲求に支配されるのだ。

同時にどうか他の女性の前ではそんな風に優しく微笑まないでと、黒い感情が渦巻く。そんな支配欲にも似た感情に戸惑うこともあるけれど、それがいわゆる"恋"というものなのであれば、やっと私も知ることができたのだ。

血の繋がりのある人々以外を愛おしいと思うはじめてのこの気持ちを大切にしたい。




願わくば、今日という日が楽しいものになりますように。

沢山、大悟さんの笑顔を独り占め出来ますように。


< 157 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop