優しい彼と愛なき結婚

乗降の少ない小さな駅で降りる。
大悟さんはそれが当たり前のことのように、私の手を引いてくれた。

これは私が望んでいたデートのかたちだ。


「フリースクールって、卒業しても高校卒業資格が得られるわけじゃないからさ。フリースクールに通っても仕方がないとか、意味がないとか、普通の高校に行かなきゃ人生終わりだとか。世間の目は冷たいんだよ」


「そうなのですか?」


フリースクールのこと自体よく知らないが、そっか。そんな風にフリースクールを謙遜する人もいるんだ。

私は子供たちの拠り所になるのであればそれでいいと思う。自宅に引き篭もっているよりはきっと良い時間が過ごせそうだ。


「でもアンタはフリースクールに行くことが偉いって言ったからさ。フリースクールも普通の高校と同じように見てくれているんだって思った」


特に意識していない発言だった。
土曜日に学校に来て勉強をしていること自体が凄いよね。



「優里のそういうとこ、惚れるわ」


「え?」


「いや?うちの奥さんは自慢だってこと」


「からかわないでくださいよ!」


ホント、心臓に悪いから止めて…。


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