優しい彼と愛なき結婚

顔を歪ませ、羽奈ちゃんは大悟さんの胸に顔を押し付けた。


「私は大悟がいないとダメなの。あの人が私より優れているって言うの?」


「羽奈、人間相手に優劣はつけられないよ。ただな、ひとつだけ言えることがある。優里のことをなにも知らないくせに偉そうなこと言うな」


「……大悟のバカっ」



羽奈ちゃんのすすり泣く声が漏れる。

彼女は必死で大悟さんにすがろうとしている。恥もプライドも捨てて、傷付くと分かっていながら懸命にすがっている。



「お茶煎れますから、座ってください」

「ありがとうございます」


立ち尽くしていた私に先程の男性は声をかけてくれ、近くのソファーに誘導された。

羽奈ちゃんの背中に手を回して優しいリズムで叩く大悟さんを見つめながら、ぐるぐると知らない感情が渦巻き、私の心中も穏やかでなかった。


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