優しい彼と愛なき結婚
「どうぞ」
「いただきます」
可愛らしいウサギのイラストが描かれたマグカップを差し出され、ハーブの香りが漂う。
「はじめまして。こちらの園長を務めております中里(なかさと)と申します」
「はじめまして。私は桜野 優里(さくらの ゆうり)と申します。こちらよかったら皆さんで召し上がってください」
「ご丁寧にありがとうございます。…話には聞いています。大悟も可愛いお嫁さんをもらったものですな」
「とんでもないです」
私は大悟さんに選ばれて、お嫁さんになったわけじゃない。大悟さんを利用して、お嫁さんになったんだ。
「羽奈は大悟にゾッコンでね。あのくらいの年齢は年上に憧れを抱くものだから、大目に見てやってください」
「そうですよね…」
「このハーブティー、子供たちには人気ないのですが上質なものなのです。ゆっくり飲んで行ってくださいね」
温かいハーブティーと、朗らかな園長先生。
心が落ち着く。