優しい彼と愛なき結婚

羽奈ちゃんは大悟さんがなにか声を掛けると、やっと顔を上げた。


他の生徒さんたちは私のことをチラチラと見てくるが、側には来てくれなかった。私の方から話しかけて良いものか迷う。もしかしたら自分たちの大切な空間に部外者が入ってきたことをよく思っていないかもしれない。


「俺は浅木 龍(あさぎ りゅう)です。大悟さんにはいつも勉強見てもらってます」


「春翔(はると)です。大悟さんにはいつもサッカー教えてもらってます!」


2人の男子生徒が話しかけてくれた。


「うちの奴ら、人と関わるのが苦手だからすぐには打ち解けられないけど、みんな優里ちゃんのこと歓迎してるんで!」


真面目そうな男の子が龍くん、くるくるとパーマをかけた男の子が春翔くんだ。


「おい、春翔!いきなり"ちゃん"付はないだろ」


「うっせーな、大悟!」


「俺は呼び捨てかよ!」


羽奈ちゃんの手を引いて大悟さんは私たちの間に割り込むと、ノートで春翔くんの頭を叩いた。


「痛っ、」


「ほら、昨日おまえが分からなかった問題!分かりやすく解説書いてきてやったぞ」


「うわ!ありがと!」


春翔くんは両手でノートを受け取り、すぐにパラパラと捲った。


「イラストつきじゃん!」

「有り難く思えよ!」


大悟さん、やっぱり凄いです。
その場所がどこであっても、勉強熱心な生徒たちは凄いし、彼らを見て自分も頑張らないとと背中を押されましたよ。

< 166 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop