優しい彼と愛なき結婚

階段の下まで送ってくれた生徒たちに手を降り、フリースクールを後にした私たちはそのまま大通りを直進する。


「さっきとは違う駅から、次の目的地に向かうから」


「はい」


フリースクールが見えなくなった頃、大悟さんは手を差し出してくれた。そっと彼の右手に指を絡める。


今まではただ繋ぐだけだったけれど、思い切ってその指に絡めてみた。恋人繋ぎというやつだ。


「ん?どうした?」


自然にしたつもりだったけれど、やはり大悟さんは違和感と受け取ったらしい。


「嫌ですか?繋ぎたいなぁと思いまして」


「もちろん、嫌じゃないけど。…羽奈のこと気にしてる?」


まぁ、そうだよね。
気にしてないと言えば、嘘になる。


「羽奈ちゃん、可愛い子ですね」


「あの年で一丁前に雑誌のモデルやってるからな。高校生に人気のメイク道具かなんかのイメージキャラクターもやってるらしい」


「モデルですか…あの可愛さなら納得です」


ライバル認定してもらったけれど、彼女の方が何倍も大悟さんに相応しい気がしてくる。年齢を除いては…あれ、私が優っているところって年齢だけ?

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