優しい彼と愛なき結婚
絆と見守る優しさ
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開店前の花林のカウンター席で、歩夢が指先でペンをくるくると器用に回す。
「んー、うちは毎回お金をかけずに家族の誕生日を祝ってきたんだ。去年はばあちゃんの誕生日に、好物のどら焼きを手作りしたり、姉ちゃんの時は1日5食のレアチョコレートに朝から並んだかな」
俺はまかないを食べながら、歩夢の話を聞く。
優里の誕生日プレゼントを決めかねているため、こうしてバイト先で作戦会議だ。
多くのものが金で手に入る時代、反対に金をかけない方が難しいと分かった。
まぁ正直、俺のお財布も指輪を買ったことにより寂しくはなったが。給料日まで後一週間あるしな…。
「そういえば大悟さん、指輪あげたんだね」
「まぁな」
「暇さえあれば姉ちゃん指輪見てニヤけてるよ。よっぽど嬉しかったみたい」
指にはめられたお揃いの指輪。
独占欲の表れのような気がして渡すことを躊躇っていたが、喜んでもらえたなら本望だ。少しは虫よけになるだろう。
「指輪を超えるプレゼントはなさそうだけど、なんかいいのないかな」
名案が浮かばずに唸り声を上げる歩夢になにか名案を提供したいが、しっくりくるものが浮かばないでいた。