優しい彼と愛なき結婚
「子供は多い方が良いわ。賑やかだし、跡継ぎも必要ですし」
「母さん、気が早いですよ」
「そう?お父さんも早く孫の顔が見たいでしょう」
「そうだね」
4人掛けのテーブルでひとり置いてきぼりにされている私は先程から口を閉ざしているのに、それを気に留める者がいない空間。私の話なのに、私の同意や意見など求めていない空気に惨めな気持ちになる。
「仕事はすぐにでも辞められるのかしら」
「そこは優里の業務の引き継ぎもありますから、会社と相談して円満に退社させますよ」
はい?
誰が会社を辞めるって?
心の中で悪態を吐くものの、声に出すことはできない。
幼馴染と、その家族のプライドが高いことは承知しているし、なにより私はーーこの家族に逆らうことができない。