優しい彼と愛なき結婚
歩夢の次は水無瀬だ。
朝一でフリースクールに向かう駅のホームで携帯に着信が入った。
『相談があるからいつもの場所で』
そう言い残して一方的に切れた電話に、首を傾げながらも反対ホームに移動した。
相談されるようなガラでないんだがと、悪態をつきながらも指定されたいつもの場所ーー美山駅のファミレスに向かった。
「相談って?」
ウエイトレスにコーラを頼み、席に着く。
水無瀬は開いていたノートパソコンを閉じて、眼鏡を外した。
寒くなってきたが彼女はまだノンスリーブで雪のように白く細い腕を出していた。
「私、留学することにしたの」
「留学?なんで」
「父さんからの仕送りも今月で最後にしたわ。向こうで自分の力で頑張ってみたいの」
「決めたなら、応援する」
母親は違えど、妹には代わりない。彼女の理解者でありたかった。