優しい彼と愛なき結婚
優里と綾人のホテルの一件以来、顔を合わせてはいなかったが、すっきりとした表情をしていた。
綾人に全てを吐き出した分、気持ちの整理がついたのかもしれない。
「大悟のこと、ずっと好きだったわ」
寂しそうに笑うなよ。
「……ごめん」
気付かなくて、ごめん。
応えてやれなくて、ごめん。
「勘違いしないで。半分しか血の繋がらない私を家族として扱ってくれたことが、とても嬉しかったの。私を妹として見てくれる大悟が好きだったから、恋人になりたいとは思わないわよ」
「これからもおまえは俺の妹で、家族だよ」
いつも気高く気丈に振る舞う水無瀬の顔が歪む。
「…分かってるわよ」
震えた声に、上乗せするようにしてウエイトレスを呼んだ。
「水無瀬、ここのアイス好きだろ。食べてけよ」
「餞別代わりに奢ってよね」
注文した2つのアイスクリーム。
昔と変わらない光景に、水無瀬は微笑んだ。