優しい彼と愛なき結婚
「私のことは心配しないで。レイにホームステイ先を紹介してもらったの。最初はひとりよりも信頼できる人の側がいいって」
「俺には事故報告かよ」
「あなたは優里ちゃんのことだけ考えてればいいのよ」
「…この間、世話になったそうだな。ありがとう」
久しぶりに美味しい食事ができたと喜んでいた。
「大悟の大切な人は私にとっても大切だから。それにあの子のことは、一生懸命だから好きよ」
「そうか」
2人はいい友達になれるのかもしれない。信念を持っているし、何より辛い現状を嘆くことなく精一杯、生きているところが。余計なことは言わないけれど、このまま2人の縁が続けばいいと思う。
「大悟こそ幸せになりなさいよ」
「もう幸せだよ」
崩壊した家庭に育ち、夫婦の醜さを知った。
結婚などすることはないと、強く思っていたのに。
全てを覆す、優里の存在。
全ての家庭が崩壊するわけでも、全ての夫婦が壊れるわけでもないと考え直すことができた。
俺は世界は、彼女中心に回っていく。