優しい彼と愛なき結婚
「旦那さんが入れますが、よろしいですか」
メイクアップされて真っ白なウェディングに身を包んだ自分を鏡で見ているとスタイリストの女性から声をかけられた。
「はい、お願いします」
「お2人の準備が整いましたら、スタジオまでお越し下さい。カメラマンが待機しております」
「分かりました」
「では失礼いたします」
扉が開き、スタイリストさんと入れ違いに入ってきた大悟さんと目が合う。
タキシード姿の彼が、そこにいた。
「…綺麗だ、」
難しい顔をしながら歩いてきた大悟さんは私の正面に立ち、腰を屈めて目線が合うようにしてくれた。
「ごめん、綺麗以外の言葉が浮かばない。感動しすぎて」
「……」
大悟さんの褒め言葉はとても嬉しかったけれど、こちらも彼のタキシード姿に見惚れていて、反応が遅れてしまった。
「大悟さんも、素敵。カッコよすぎます…」
緩い服装が定番の大悟さんがフォーマルな衣装を纏うと、雰囲気ががらりと変わる。
髪の色からして英国の紳士がそこに立っているようだ。
「歩夢に感謝しないとな」
「そうですね」
お互いに瞬きも忘れて、見つめ合った。