優しい彼と愛なき結婚
純白のウェディングドレス、王女になったかのような豪華なティアラ。
幼い頃の憧れだった。
いつからか着ることを諦めていたけれど、漆黒のタキシードを纏う大悟さんの隣りに立つことができた。
全て、彼の優しさのおかげだ。
「大悟さん、私と結婚してくれてありがとうございます」
深々と頭を下げたいが髪型が崩れてしまっては大変なので、精一杯の笑顔で伝える。
「こちらこそ結婚しようだなんて突拍子もない提案に応えてくれてありがとう。俺に家族の温かみを教えてくれてありがとう」
大悟さんの顔が迫る。
いつも通り目を閉じてーー
「ダメです、リップ落ちゃいます」
ハッとして、ぐいぐい大悟さんを押し返す。
「落ちないようにするから」
「ダメですよ」
「……こんな可愛い姿見せておいて、お預けかよ」
「仕方ないでーー」
「俺は無理。我慢できない」
諦めの悪い大悟さんが再び顔を近付けてくる。
その強引さと誘惑に負けて目を閉じようとした瞬間、
勢いよく扉が開いた。