優しい彼と愛なき結婚
「姉ちゃん!」
駆け足で室内に入ってきた歩夢の姿に、素早く大悟さんは私から距離をとった。
「歩夢?どうして?」
「やっぱり姉ちゃんのウェディングドレス姿見たくなって。頼んだんだ」
歩夢の後ろからおばあちゃんまでやって来て、その後ろに副社長ことレイさんが立っていた。
「レイさんが車を出してくれて」
「……アンタらなぁ、」
少し不機嫌な大悟さんだったけれど、本気で嫌がっているわけではないだろう。
「優里、綺麗だよ」
おばあちゃんが私の手をとってくれる。
「姉ちゃんじゃないみたい」
ウェディングドレス姿を家族に見せることはとてもくすぐったい。
それでもおばあちゃんが涙目になっていることに気付き、もらい泣きしそうになる。
「レイ、おまえは見るな」
「せっかく来たのに?」
「もう帰れ」
大悟さんは副社長の目を掌で覆っていた。