優しい彼と愛なき結婚

ここまでこれたことは、副社長の尽力でもある。

福利厚生の整っている大企業の赤羽電機に入社できたこと。

副社長が裏で動いてくれたようで、さすがの綾人さんも業績が右肩上がりの赤羽電機に逆らうことはできないらしく、私への接触と嫌がらせが一切なくなった。

そしてなにより彼はーー大悟さんの一番の理解者としてずっと一緒に歩んでくれているのだ。




「副社長、ありがとうございます」

「とても素敵だね。大悟が隠したくなるわけだよ」

「黙れ」

「はいはい、私は外で待ってるから。写真はちゃんと見せてよね」



大悟さんの肩を叩き、私に会釈すると副社長は部屋を後にした。


私はまだ副社長よりも大悟さんのことを分かっているとは言えない。きっと私には話せないことも副社長には打ち明けているだろう。もしかしたら私の一番のライバルは副社長なのかも。


「…手強いな」

「ん?」


不思議そうな顔をした大悟さんに首を振る。
悔しいから教えないよ。




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