優しい彼と愛なき結婚
我が家からだと東京営業所よりも本社の方が少しだけ距離があり、玄関で大悟さんを見送ることが日課だ。
早々にレイさんから様々な案件をふられているようで、帰りが遅いこともあるが、なんだかんだ言いながらやる気満々だ。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
靴を履き終え、ドアに手をかけた大悟さんに手を振る。
「気を付けてね」
「おっ、と」
ん?
ドアノブから手を離した大悟さんに首を傾げれば、
その手は私の頬に添えられた。
「いってらっしゃいのキスを忘れてた」
そして唇に大悟さんのそれが重ねられ、甘い熱を送られる。
「ん、っ…」
角度を変えて何度も重なる。
朝から濃厚な口づけに、とろけてしまいそうだ。
ぼんやりと大悟さんを見る。
「今夜は早く帰るから」
唇を離した彼は爽やかな笑顔を残して行ってしまった。
ーーありがとう、大悟さん。
たくさんの感謝と愛を込めて、
これからも私は、
大悟さんと未来を歩んでいきます。
優しい彼と、愛なき結婚生活【完】
2019/10/24
最後までお付き合い頂けた方がいらっしゃいましたら、心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。