優しい彼と愛なき結婚
尊敬する幼馴染で居て欲しかった。
早く好きな人を見つけて結婚していれば、こんな最悪な展開にはならなかったよね。
彼に愛人がいるからこそ、私は結婚相手に選ばれた。つくづく運がないと思う。
よく晴れた日に似合わないもやもやとした気持ちを抱えながら、傘を返すことを理由に彼を呼び出した。
この運命を変えたいと、願いながら。
「よっ、」
3回目に会った彼は髪色に近い赤いTシャツとジーンズというラフな出で立ちで、笑って出迎えてくれた。
「すみません、お呼び立てしてしまい…」
「いや?飯を奢ってくれるんだろう」
「はい。なにか食べたいものはありますか?」
交換した連絡先に傘を返すついでにランチでもどうかと誘ってみれば、数秒で"行く"という返信がきた。
昔の綾人さんと私もこういうラフな関係だったはずなのに。いつから道を違えたのだろう。