優しい彼と愛なき結婚
「綾人(あやと)さん、どういうことか説明してください」
途中から味のしなくなった料理を無理矢理に胃に押し込めて、オペラを観に行くという幼馴染の両親を玄関まで笑顔で見送った。
私は十分に耐えたはずだ。
幼馴染の部屋に通され、扉を閉める間も無く詰め寄る。
「優里と僕が結婚することは決まっているのだから、問題ないはずでしょう」
「私は、恋人から始めたいと…」
「結婚するまでは恋人ってことでいいでしょう。座って」
「違います。そういうことではなくて…」
「恋人も夫婦も同じだと思うけどね。僕は早く優里と結婚して、子供を育てて、和やかな人生を過ごしたいと思うよ」
綾人さんは優しく微笑み、私の手を掴んだ。
2人でソファーに沈む。
私に馬乗りになった綾人さんは満足そうに見えた。