優しい彼と愛なき結婚

「しつこいですが、もう一度確認させてください。あなたには何のメリットもないのに。どうしてここまでしてくれるのですか?」


彼は小さく笑い、扉から手を外してひらひら左右に振った。


「俺にもメリットあるよ。アンタのこと可愛い奥さんってみんなに自慢できるじゃん」


「……そんなお世辞を…」


どこまで本気なのか分からない。
明日には結婚の話自体、冗談だと言われてしまいそうな危うさがある。


「俺は綾人のようにアンタを守ってやることはできないぜ。地位も金もないからな。ーー俺にできることはひとつだけ。どんな時も、あんたの一番の味方でいるよ」


逸せない。
綾人さんから感じる圧力とは正反対の、優しい視線に捕われていたくなる。

きっと大悟さんの隣りに立つ女性は幸せになれる。そんな特等席を私なんかがもらってしまって本当にいいのだろうか。

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