優しい彼と愛なき結婚
出汁のきいた味噌汁と大好きな貝のお寿司を口にして、数日ぶりにご飯を美味しいと感じた。
結婚の話をされてからは食欲もなかった。マリッジブルーなんてものじゃない。私は心から綾人さんと結婚をすることが嫌だったのだ。
「大悟さんのこと、もっと教えてください」
「聞きたいことがあればなんでもどうぞ。隠すこともないしな」
「それじゃぁ私から自己紹介させてください」
「おう頼む。次、何食う?」
空になったお皿を横目に醤油を注いでくれる。
「マグロにする?」
「はい!」
彼の気遣いは自然で、まだ3回しか会っていないにも関わらず大悟さんの纏う空気に肩の力が抜けた。