優しい彼と愛なき結婚
寿司屋からそう遠くないカフェのテラス席で程良い風にあたりながら、自然の甘みがあるハーブティーを飲む。
大悟さんの紅茶からは柑橘系の良い香りが漂ってくる。ほっとするひと時だ。
「ん」
両手でマグカップを包んでいた私に大悟さんは右手を差し出した。
少し照れてくさいが迷わずに手を重ねると、力を込めてギュッと握ってくれた。
「俺の奥さんになってくれますか?」
「私で良いんですか?」
私にしかメリットのない結婚。だからせめて良い奥さんだと大悟さんに認められるように精一杯、頑張ろう。
「俺はアンタがいいの」
その笑顔を見て、思ってしまった。
もっと違う出逢いができたのなら、恋愛結婚できたのかな。そうなりたかった…。