優しい彼と愛なき結婚
2人のはじまり
月島家には大悟さんから説明してくれた。
自分の口から綾人さんに伝えたいと思ったが、その前に両親に打ち明けた方が後々動きやすいと大悟さんは譲らなかった。
席に着き、ご両親を前にして罵倒されるかと身構える。家にあげてもらえただけでも感謝しないといけない。
「2人の結婚式はいつにするの?」
「結婚式?俺はそういうのパス」
「なに言ってるの?ウェディングドレスは女性の夢よ」
アレ?
開口一番、お母様の口から発せられた言葉に首を傾げる。
「今、金ないから。貯めてから考えるよ」
「…情けないわ。まぁ子供は多い方が良いわよね。明るい家庭になるわ」
「気が早いだろ?それともデキ婚をお望みでした?」
「なに言ってるの。でもお父さんも早く孫の顔が見たいでしょう」
「そうだね」
4人掛けのテーブルでひとり置いてきぼりにされている私は先程から口を閉ざしている。それでも綾人さんと挨拶に来た時とは全く違う空気を感じた。あの時のように惨めな気持ちにはならず、大悟さんに任せようと落ち着いて食事ができている。
「それで?お仕事はいつ辞めるの?」
また同じ質問。
お母様は私に専業主婦を希望のようだけれど、今度こそ辞める意思はないと伝えよう。勇気をもって。