優しい彼と愛なき結婚
しかし。
すぐに大悟さんは笑った。
「気を遣わないでさ、友達といる感覚で良いぜ?まぁ人間、生理的に無理つーのもあるし。本気で無理だったらそう言ってくれればいいさ」
いただきます、とマイペースにお茶を飲み始めている。
「私、休日は家でゴロゴロしているだけで…男性が好む場所とか全く知らないんです」
「あー、俺は大丈夫だよ。どこでも楽しめるから」
「はい…」
「アンタは人に気を遣いすぎ。俺との空気は読まなくていいし、遠慮もいらないーー俺は綾人じゃないぞ」
「はい…」
昔から綾人さんは私に選択肢を与えなかった。
綾人さんの操り人形のように私は彼に従い、彼が望むままの幼馴染みを演じてきた。
私は綾人さんが好むミディアムヘアーをいつまで続けるのだろう。
「じゃ、早速。アンタのわがままを聞かせてくれ。なんでもいい」
「わがまま?」
「明日一日かけて、俺が全力で叶えてやるよ」
ガッツポーズをした大悟さんの仕草が可愛すぎて、私もつられて笑ってしまった。
そっか。
肩の力を抜いてもいいんだね。