優しい彼と愛なき結婚

はああああああ。
鏡の前で盛大なため息を吐く。

前髪は好きな方に散らかり、後髪にもうねっている。自身の寝癖の酷さは自覚しているが、女としてどうだろう。

寝起きでほとんど目が開いておらず、もちろんすっぴんだ。


「はああああああ」



旦那様より早く起きて豪華な朝ご飯を振る舞う予定だった。

こんな寝ぼけた顔で昨日の服装のまま朝の挨拶を交わすつもりはなかったのに。
連日の疲れかリビングで眠ってしまったようだ。

大悟さんに申し訳なくて、溜息が止まらない。


それでも出掛ける予定は変えないでくれたので、少し奮発した花柄のカジュアルなブラウスと、膝丈の白いパンツを着て行こう。


失敗したことを悔いても仕方ない。

次だ!次!


シャワーを浴び、すっきりした頭で精一杯のメイクをして、大悟さんの待つリビングへ飛び出した。


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