一途な御曹司と16歳の花嫁
伊織さま。


こんなに高いものを買ってもらうわけにはいかない。


だけど、一度だけ着てみるくらいならバチはあたらないかな。


そんな風に思ったのは、お嬢様みたいに着飾った私を彼に見てもらいたいと無意識に願ったからかもしれない。


「おい、いつまで待たせるんだ。早く着替えろよ、ったく女はこれだから」


クリーム色のワンピースに着替えて、緊張しながらドアを開けると伊織さまが痺れを切らしたように待っていた。


「・・・っ」


だけど、私を見るなり絶句してしまった。


瞳を大きく見開きまるで動かないので、こっちが驚いた。


ああ、私ったら調子に乗って浮かれてしまって。


私なんかがお嬢様みたいになんてなれるわけないのに。


真似したって、中身が伴っていないんだから。

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