一途な御曹司と16歳の花嫁
「やっぱり、似合わないですよね、すみません」


しょんぼりと俯いていたら伊織さまは私に背中を向けてしまった。


ああ、やっばりダメなんだ。


お見苦しいものを見せてごめんなさいと、いじけてドアを閉めようとしたら。


「まあいいんじゃないか」


「え?」


伊織さまは私に背中を向けたまま、片手で顔を隠すように押さえてボソボソと呟く。


彼の耳が少し赤いことに気づくと、私の体温も一瞬で上昇した。


「綺麗だよ」


「あっ、あの」


消え入りそうなくらいに小さな声でありがとうございますとお礼を言って、急いでドアを閉めた。


き、綺麗って今言われたの?


信じられない、彼からそんな風に褒めてもらえるなんて。


「せっかくだから、このままそれを着て行こう」


ドア越しに聞こえる彼の声は心なしか弾んでいる。
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