一途な御曹司と16歳の花嫁
フッと口の端をあげて笑うその表情に、胸の奥がジリジリと焦される。


「つむぎ、俺に会えなくて寂しかった?」


見透かしたように言われて、さっと俯いた。


優しい声はなんでもお見通しだって言ってるみたいに聞こえる。


「えっと、そんなことは。
私がここへ来たのは、奥様に呼ばれたからです」


素直な気持ちは、やっぱり言えなかった。


ほったらかしにされてるような気がして、ちょっと寂しかっただなんて言えるわけがない。


「なんだ、そうなのか」


ちょっと残念そうに唇を尖らせる彼のシャツをまた無意識に掴んでいた。


自分の気持ちをすべてさらけだすのは、二重の意味で無理だったから。


父の手前、やはり手放しで彼の胸に飛び込めない。


私達の結婚には未来があるわけではないのだから。


もう一つはただ単に恥ずかしい気持ちから。
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