一途な御曹司と16歳の花嫁
でも、背の高い伊織さまを私1人で運べるかな。いやいや、絶対無理でしょ。


「南さんを呼んできましょうか。伊織さまはここで待っていてください」


もたれかかる彼を離して立ち上がろうとした。


「待て、行くな」


その時、立とうとして腰を浮かした私は後ろから、強い力で抱きしめられた。


「きゃーっ」


「大声をだすな」


「ご、ごめんなさい。でも伊織さまがこんなこと」

「黙って」


彼の形のいい長い指が、私の唇にあてられる。

チュッ

そして、後ろから抱きしめたままの体勢で、後頭部にキスされたような気がした。

うそ、なにこれ。どうして?

なにが、起きてるのか全然わからなくて、頭が追いつかない。


どうしたんだろう、伊織さま。


もしかしたら、これって。

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