一途な御曹司と16歳の花嫁
奥の方が騒がしくなったから、目をやれば先ほどの令嬢達に伊織さまが囲まれている。


その光景は、その時の私にはとても辛かったけど、私と彼の立ち位置を再認識するには十分だった。


ほらね、つむぎ、これがあなたと彼の本来の姿なんだよ。


優しくされたからって浮かれたりして、なんてバカ。


そうじゃなくても私達は旦那様が、戻ってこられたら即刻別れさせられるのに。


「イオくん」


それなのに、私は無意識にまたその名を呟いていた。


大好きだった幼なじみの男の子。


照れ屋でぶっきらぼうな少年は私をいつも大切にしてくれた。


パーティー会場では、緊張する私の手を握っていつも2人で隅っこにいてくれた。


「つむぎ」


ほらこんな風に心配そうに私の名を呼んでくれたんだっけ。


って、えっこの声は。
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