一途な御曹司と16歳の花嫁
「ここで何をしてるんだ?」


床にしゃがんでいた私の前には片膝をついて、こちらを覗きこむその人の綺麗な姿があった。


「あっ、イオくん」


私に気がついた伊織さまが心配して近寄ってきてくれたんだ。


「誰がこんなことしろって言ったんだ?南か?」


「あ、いえ私からです。忙しそうだったのでお手伝いしてるんです」


「そうか」


言って、私の右手を引き寄せる彼。


そしてポケットからハンカチをとりだして私の手を丁寧に拭いてくれた。


お皿と残飯を拾いカートに乗せ終わっていた私の手はひどく汚れていたから。


「ごめんなさい」


「いや」


周りの人達に注目されているような気がして焦って立ち上がる。


彼の優しさは涙が出そうなくらい嬉しかったけど、こんなところをこの場の人達にはあまり見られたらいけないような気がした。
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