一途な御曹司と16歳の花嫁
そしてその表情はみるみる怒りの形相に変わる。


私は彼と目が合ったけど、たまらない気持ちになってすぐに逸らした。


こんなところを彼に見られることが、辛くて悲しい。


「正臣、つむぎには手を出すなと言ったはずだぞ」


激昂した伊織さまが正臣の胸ぐらをつかむ。


「うるせーよ。伊織、それはお前が留学してる間だけの約束だろ?」


からかうように言う正臣は、伊織さまよりも冷静で狡猾だった。


まるでこの状況を楽しむかのようないやらしい笑い方をする。


「つむぎに手をだしたら許さない」


言い終わらないうちに伊織さまの右腕が上がる。


アッと思うまもなく正臣の頬に拳が振り下ろされ、床に転がされる。

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