一途な御曹司と16歳の花嫁
「伊織、どうしたの？何をしているのっ」


人混みをかき分けて彼に走りよる奥様は涙で顔がグシャグシャになっている。


「伊織、正臣さんこれは一体どういうことですか？」


奥様の悲痛な叫びも伊織さまには届かないのか一向に動きをとめようとしない。


鼻や口から血を流している正臣をなおも殴ろうとする伊織さま。


「いけません、伊織さま。ひとまずお怒りをお納めください」


その時ようやく部屋に入ってきた南さんが、伊織さまを背中からすばやく押さえて静止させた。


「離せ、南。こいつを殴らせろっ」


「伊織さま、周りをご覧ください。ここは南に預からせてください」


南さんは、伊織さまをガッチリと押さえ込み動けないように腕を後ろにねじり上げている。


荒っぽい止め方に見えたけど、そうでもしないと今の伊織さまは誰にも止められないだろう。
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