一途な御曹司と16歳の花嫁
そうだ、私とは結婚してなかったわけだから、まさか彼女と元サヤというか、再び婚約者になっててもおかしくないんだ。


「・めて」


喉の奥がカラカラで苦しい。うまく声にならないのがもどかしい。


「やめて」


思わず呟いて庭からその部屋へまわりこむ。


少し伸びた雑草をかきわけて、走り寄ると悲鳴がした。


「きゃっ、泥棒?」


言って、イオくんの腕に縋り付くように身を隠すユリナ様はとても可憐だった。


泥棒ってもしかして私のこと?


でも確かに上下黒ずくめだし、帽子にメガネにおまけにマスク。あやしすぎるいでたち。


だけど、この時の私には彼女のほうがよっぽど泥棒猫に見えていた。


私の大切な人がとられちゃうって本気で思った。


「離れてください、お願い」


「誰?」


「触らないで、彼は私の」
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