一途な御曹司と16歳の花嫁
「え?つむぎか?」


イオくんはびっくりしたように目を見開く。


「イオく・・キャッ」


草に足をとられて転んでしまうけど、なんとか手をついてよろめきながら彼に走りよった。


彼はバルコニーの柵を軽々と飛び越えて私のもとへ走って来てくれた。


「イオくん」


「どうして?」


「イオくんに会いたかったからこっそり抜け出してきて」


ハアハア


突然、酸素を吸うのが苦しくなる。


興奮して過呼吸のようになっているのにも気がつかなかった。


「落ちついて、つむぎ」


彼は慌てて私のマスクを剥ぎ取る。


でもまだ全然酸素が足りなくて苦しい。


「それなのに、イオくんは他の女の子といて。私のことなんて忘れて」


「つむぎ、落ちつくんだ、ちゃんと息を整えて」

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