一途な御曹司と16歳の花嫁
プウッと頬を膨らませると、彼は眩しそうに瞳を細める。


「あと、愛しい」


彼はまた屈んで顔を近づけるから目を閉じて、甘い誘惑に身を委ねた。


キリが無いくらい何度もキスをして私達だけの世界にどっぷりと浸っていく。


このまま、なにもかも忘れたい、そう思った。


彼に抱きしめられたら辛いことも、寂しかったことも全部全部、流れて消えていくような気がした。


今の私の最大の癒しの空間、それがあなたの腕の中だから。


イオくんで私の頭の中をいっぱいにして欲しいの。


だけど、そんな幸せな時間は無情にもあっさり終わってしまう。


「つむぎ、電話が鳴ってる」


「へ?」


キスに夢中になってぼんやりする私に、彼は低く呟く。


ポケットの中からスマホを取り出したら、母からだった。


ハッとして慌てて画面をタップする。
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