一途な御曹司と16歳の花嫁
彼の指先はいたずらっぽく私の唇をなぞるから、ドキドキした。


顔を見合わせて微笑み合うと嬉しかった。


昨日からお互い、明るく振る舞って軽口を叩いたり、冗談を言って笑ったり。


逃げ出した直後の興奮と高揚感が落ちついた時、また別の感情がおそってきた。


本心に芽生え始めた不安や恐怖を隠すように、私はあえて無邪気に彼に甘えていた。


ほんとは怖くて、不安でたまらない。


ともすれば、新海家から逃げだした罪悪感におしつぶされそうになる。


彼がどんなに新海家にとって大切な人なのか、わかっていればいるほど私の罪は重い気がした。


そして、なにより残してきた人達のことをおもうと、胸が痛んだ。


「つむぎ?疲れてるみたいだから少し寝てていいよ。着いたら起こしてやるから」


窓の外を無言で見ていたら彼が心配そうに私を覗きこむ。
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