一途な御曹司と16歳の花嫁

それは私の頭の中の記憶を穏やかに呼び戻していく。


「よし、いいぞ。つむぎ目を開けて」


「イオくん、ここ」


言われてすぐにまぶたを開いたら、明るい光に目が眩みそうになる。


そして次に目に飛び込んできたのは、色とりどりの薔薇の花々。


赤や白、ピンクにオレンジ。


「うわーっ」


見渡す限りの薔薇の花園に、心が躍る。


彼の背中から下ろしてもらうと、キョロキョロあたりを見回す。


ここってもしかして薔薇園？


すごい、こんなにたくさんの種類が揃ってる。


なんて素晴らしい景色だろう。


見たこともないような珍しい品種も庭園一杯に咲き誇っている。


そのどれもが華やかで美しく優雅だ。


「あ、これ可愛い。柔らかくて優しい色」


アプリコットのふんわりした色合いのその薔薇は顔を近づけると上品な香りが漂う。