一途な御曹司と16歳の花嫁

彼が長い指で、私の口の端についたご飯つぶをとってくれる。


「ありがとうございます」


お礼を言って、恥ずかしいからすぐに目をそらした。


ウフフっと意味深に微笑んだ奥様は、眩しそうに私達2人を見るからますます照れ臭かった。


だけど嬉しそうに笑いかけてくれる奥様にも、本当のことが言えなくてちょっと胸が痛かった。


だって、私は2ヶ月間だけしか彼の妻ではいないんだから。


結婚式のことまで考えてくれている奥様には悪いけれど、2ヶ月先に旦那様がお戻りになられたら私達の結婚生活は終わるんだ。


だから、こんな風に仲のいい夫婦を演じているのが騙してるみたいで心苦しかった。


私は父の言う通り、2ヶ月なんとか伊織さまとの結婚生活をやり過ごそうとしているだけなんだから。