一途な御曹司と16歳の花嫁
「なに、ぼんやりしてるんだ。ちゃんと集中して俺を見ろ」


射るような彼の眼差しにもうやぶれかぶれの私は、覚悟を決めた。


「は、はい」


つむぎ、女は度胸よ。

何も殺されるわけじゃないんだから。


たぶん大丈夫・・のはず。


開き直ったようにじっと、彼を見据えたらすぐに視線を逸らされた。


「そんなに見るな、バカ」


「はあ」


さっき、俺を見ろって言うから見たんだけどな。


「ほんとに、ムカつくやつ」


どうしょう、私また彼を怒らせちゃったのかな。


「こめんなさっ。んっ」

謝ろうとしたら彼の唇が、私の唇に重ねられた。

身体中に電気が走ったように、足のつま先がビクンとした。

触れ合うだけの唇は、すぐに離れていく。


彼は至近距離で、じっと私を見つめた。


私の頬に手を添えてもう一度ゆっくりとキスをした。
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